蓮珈琲 hasu cafe 編

膨らむ珈琲 先日、東京の水道橋にあるギャラリーカフェで、デンマークの美味しいシナモンロー ルと珈琲を 味あう会というものを開催してきました。 そこでは皆さんの座っているテーブルで珈 琲をドリップして簡単な美味しい珈琲の落とし方もご説 明しました。その時にある方から質問が ありました。 「どうしてそんなに珈琲が膨らむのですか?」 その日はペーパードリップでしたが、サーバーから溢れそうなくらいに珈琲が膨らんでいまし た。 そのわけは、僕の持っていった豆が煎りたてだったからです。 珈琲豆は焙煎されるとその成 分が化学変化をしてあの美味しい香りと味を生み出しますが、その 時に炭酸ガスを生成するので す。そのガスはほとんど焙煎時に排出されるのですが、豆の中にも残っ ています。そのガスがド リップの時に泡となって出るので、お饅頭のような膨らみになるのです。 あれは、本当に美味し そうですよね。 「いつも膨らまそうとしても膨らまないんですよ。」 その方はそうおっしゃっていました。 「いや、それは豆の鮮度の問題ですね。焙煎から時間が経っていれば、ガスは自然に豆から排出 させるんです。また一度粉にしてしまえば、もっと急速にガスは排出されます。」 とご説明しましたが、もうすこし具体的にご説明しますね。 豆の中のガスは大体1週間くらいでだいぶ放出されます。ですから、焙煎されてから1週間以内 の豆はよく膨らみます。そして、深煎りに近いほどガスの量が多いので浅煎りよりもよく膨らむ ん です。ただ、フレンチローストくらいまで深煎りにすると、逆にガスは少なくなっていくの で、あ まり膨らみません。浅煎りも生成されるガスの量がまだ少ないので、中煎りほどは膨らま ない のです。ですから、できるだけ鮮度の良い、焙煎から時間のたっていない豆を購入したほう がい いのです。 ところが、この美味しそうに膨らんだ珈琲ですが、いいことばかりではないんで す。 このガスによってデメリットも生まれてしまします。それは珈琲そのものの味がやや濁って しまう ということ。もちろん好みもありますが、焙煎から5日ほどたった珈琲と焙煎直後のもの を比較す ると、5日後のほうが味がすっきりとしていて香りも透明感があるということに気づかれ るはずで す。特に浅煎りのものにはその差が大きく現れます。 焙煎直後のものは、ややその味も 複雑で苦味も全体の中で分離したような感じになります。 僕の場合は、その豆の個性や焙煎度に よって、ベストなタイミングを見つけるようにしています。 焙煎直後の方が甘くて豊かな豆もあ れば、1週間くらい寝かせた方がスッキリとしたキレのいい 味になる豆もあります。 要するに、 膨らむほどいいというわけではないということなんです。 そこで、ドリップする時のコツをお教えします。 焙煎直後から3日以内の新鮮な豆の場合は、ガ スで膨らんで大きなお饅頭ができますが、実はそのために膨 らみの下は珈琲と分離したお湯の プールみたいになってしまっています。なので、蒸らしと言われる時間を 通常よりも短くして、 早めに全体にお湯を回し入れてください。新鮮な豆はよく乾燥しているので お湯もよく吸います から、そんなに蒸らす必要がないのです。そうすることで珈琲が攪拌されて均 一なドリップがで きます。逆に焙煎から1週間以上経っている時は、蒸らしの時間を長めに取って ください。(大 体30秒前後)そして注ぐスピードもゆっくり目に。その方が豊かな味わいになる のです。 というわけですが、なかなかその豆がいつ焙煎されたかなどわからないと思われますが、私たち のように自家焙煎というお店では大概が袋やディスプレイのところに焙煎日が記載されていると 思います。 もしない場合は遠慮なく訊いてみてください。きっと教えてくれるはずです。 美味し い珈琲豆は美味しく飲んでいただきたい。焙煎家には共通の想いです。 ぜひ、できるだけ豆で買 われて、ドリップ直前に挽いてその香りも楽しんでください。 あ、せっかくの鮮度の良い豆でも保存は?と思われる人多いと思います。 豆であれば、袋のまま でいいので冷凍してください。飲まれる時は常温に解凍するのがいいです が、冷凍のまま挽いて しまっても大丈夫です。 お湯を沸かしながら豆を挽いて丁寧にドリップして愛用のカップで。そ の間「15分の幸せ」を味 わってください。