蓮珈琲 hasu cafe 編

人生は一回生まれたら一回必ず死ぬの。

だからせっかくの命、楽しいことしなさい。

でも大人になれば自分で食べていかないといけないのだから、

好きなことは必ずそれで食べていけるようになりなさいね。

子どもの時によく母から聞かされた言葉だ。 高校時代はジャズにハマり、学校をそっちのけでジャズ喫茶に入り浸り、夜はキャバレー でサックスを吹いた。

その後はデザインの世界に入ったきっかけで美術の勉強をして、26 歳で会社を設立した が、30 歳で写真にハマり写真家に転向した。

50 歳でアンクル BUBU というカフェに巡り合い珈琲の魅力に取り憑かれ、焙煎を始める。 そして、HASU-CAFE に。

その他にも、仏教に興味が湧き、61歳で得度して僧侶に。

よくよく考えれば、僕には趣味というものはない。好きなもの、好きなことは全て仕事に

している。

さて、困った。趣味ってなんだろう?

早速ウィキペディアで調べてみた。

趣味(しゅみ)は、以下の 3 つの意味を持つ。

1. 人間が自由時間に、好んで習慣的に繰り返しおこなう行為、事柄やその対象のこと。 2. 物の持つ味わい・おもむきを指し、それを観賞しうる能力をもさす。調度品など品物

を選定する場合の美意識や審美眼などに対して「趣味がよい / わるい」などと評価す

る時の趣味はこちらの意味である。→#美学用語の「趣味」 3. 人間が熱中している、または詳しいカテゴリーのこと。

なるほど!!

3番の定義を満たすものならば、僕にもある。

それは、クルマやバイク。これは仕事にはしていないし売ってもいない。

そしてもう一つがオーディオだ。

クルマなどの乗り物は、すでにこのブログに書いた方もいらっしゃるので、ぼくは2番目

のオーディオについて書くことにする。

学生時代にジャズにハマったのだが、おそらくは多感な青春時代(死語か?笑)に聴いた 音楽がその人の一生の音楽になるのだと思っている。 ぼくはジャズのミュージシャンになりたかったほどのハマり様だったから、当然の生音に 近い音を求めた。 その結果、大学生の時にはトイレすら共同の猫の額ほどのアパートの部屋に手作りの JBL のスピーカーを置いていた。

いや、言い直せば、それしか無かった。

1960 年代のマイルスデイビスやコルトレーン、ビルエバンスなどをほぼ起きている時はそ

 

 の JBL で爆音で聴き続けていた。

よく、アパートを追い出されなかったものだ。

僕は真面目だ。 母の教えを守って、仕事に全力で臨んだから、それなりにお財布の中身も増えていた。 同時にオーディオもランクアップしていった。 はてと考えると、なぜ、オーディオは仕事にならなかたのだろう。 それは、おそらくだけど、ほかの全ての仕事の中にそれがあったからだと思っている。 デザイナーとして働いている時も様々なミュージシャンのレコジャケをデザインしたけど も、それには良い音が不可欠だったし、 写真家になってからは、ジャズミュージシャンばかり撮っていたので、レコードをいい音 で聴くことでイメージのシュミレーションができた。 そういう意味ではオーディオ趣味は仕事の中にあったのだと思う。 そのオーディオだけど、僕の機材はほぼ全てがビンテージだ。主に60年代の管球アンプ と古い JBL と ALTEC である。

現代のスーパーオーディオには興味すらない。

そのわけはシンプルで、好きな音楽が 60 年代から 80 年代のジャズだからだ。音楽はその 時代の鏡だから、その時代の機材で聴くのが最もしっくりくるのである。 あたかもそこにアーティストが降臨してきたかのようなサウンドになるのである。まあ、 自己満の世界なのですが。笑

いま HASU-CAFE の店内にはなぜかバルミューダの小さなスピーカーが一台と iPad の み。ここまで自慢げに書いてきたことを全て裏切るような機材だ。 それは、狭いからというだけではなく、今の FM から流れてくる音楽にはやはり現代の小 さな装置がしっくりくるということと、 訪ねてきてくださるお客様に珈琲だけを感じていただきたいという理由もある。 でもでもでも、いずれは旧いビンテージオーディオで当時のモダンジャズの流れる空間で 珈琲を味わっていただきたいという想いは募るばかりである。 やはりオーディオも仕事になってしまうのだろう。

HASU-CAFE 蓮井幹生